突然、頭にノイズのような物が流れ、意識が0.2秒だけ飛んだ。
とあるスーパーでのこと。僕は、いつものようにスーパーを徘徊していた。いつもといっても、四六時中スーパーで徘徊している不審者ではない。
夕飯時に、食卓に刺身が並ぶ光景を期待して、半額のシールが貼ってあるパックの刺身コーナーを見に行くのだ。でも、決して僕の欲望を満足させる品があろうとなかろうと、見るだけでも満足だったりする。
胃袋に収めなくとも満足する安い頭を持つようになったのは、ここ最近である。
それは、冬に訪れるビックイベントのおかげなのか、その”せい”なのか。
ディズニーランドである。子供も大人もすべてが魅了されてしまう夢の国がそこにある。
子供と妻は向かいの100円ショップに用があるらしく、そちらに行っていた。
僕はというと、足を踏み入れた事が無いスーパーに行く覚悟を決め、いざまいらん、なのだ。
ぐるりと店内を歩き、始めて行く店だったが、それはチェーン店であり、どのスーパーもさほど配置が違わない。違わないため、迷わずに目的の刺身コーナーに向かう事ができた。
30パーセント引きのシールを貼られた刺身のパックがずらりと並ぶ。新しい店内ではあるので照明は綺麗で、煌びやかに刺身を照らしていた。
赤いマグロは艶やかに光り、買って欲しそうにこちらを見ている。
刺身に目は付いていないが、なんだか刺身に見られている気にさえなり、通り過ぎる時に後ろ髪を引かれた。
ペットショップを立ち去る時と同じではないだろうか?なんだかマグロが潤んだ目をするチワワに思えてきた所で、自分の混乱ぶりを自覚し我に帰った。
せめて半額なら考えてもいい。でもディズニーランドがあるからと、喉から出そうになる手を必死で引っ込め、欲しくもない肉コーナーに向かい気持ちを断ち切った。
肉の声は聞こえない。魚の声も聞こえないのだが、肉の方が声が聞こえなそうな感じがする。それは、生で食べるものではないからか、どういったことなのかは僕の事情によるものだろう。
あっさりと肉コーナーを見切り、レジの前を手ぶらで通り過ぎようとしたところで、頭にノイズのような物が流れ、意識が0.2秒だけ飛んだ。
一歩にも満たなく、たぶん半歩くらいな感じだろうか。僕はどこかに行っていた。目の前は何もなく、暗ささえわからない異空間的な場所にいたような感覚だ。ストレンジャーシングスのアレに近い感覚。わかる人にはわかるだろうか。
かつて、この場所には、大きな病院があり、それに起因することなのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。
もしかしたら、遠くにいるマグロが半額になった瞬間に僕を呼んだのかもと思えば面白いのだが、結論からすると、僕はきっとそのスーパーには2度と行かないと思う。だって怖いのは嫌なんだもーん。
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