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屋根裏のネズミ

家の屋根裏にはネズミがいる、だろう。

だろうというのは、実際に見たことがないからだ。しかし、ネズミがちょうど通れるくらいの穴が壁に空いているのを発見した。

ネズミがいるということは、雄雌のネズミがいたり、子供がいたり、それらはきっとネズミの家族とよべるのではないだろうか。

ネズミが実際に人間の家族のように、グループになって生活をともししているかは知らないが、そうだったら少しはネズミを理解してみたい気もする。

ある日、ネズミ捕りを屋根裏に仕掛けたら、ネズミが一匹かかった。

大きさから言えば、きっとお父さんか、お母さんといったところだろう。

罠にはネズミが好きだといわれているチーズをつけてやった。匂いにつられてネズミが籠の中に入ると、入り口がすぼまっていて、外に出られないようになっている。こんな仕掛けでネズミが捕れるのであれば、わけないと思っていた。

こっそりと、家族のだれにも言わずに冷蔵庫からチーズを取り出し、罠を屋根裏に仕掛けた。すると翌日にはネズミが一匹入っていたというわけだ。

僕の想像では、夜中におなかをすかせたお父さんネズミが、大好物のチーズがあることに気が付き、こっそりと罠の中に入る。僕は、冷蔵庫からチーズを取ったが、お父さんネズミもチーズを取ろうとしたのだ。

そう考えてみると、妙に親近感があり、僕におびえてチーズを食べないネズミが少し愛おしく思えてきた。

僕の家ではネズミの被害にあっているということはない。ただの好奇心でネズミを捕まえたというわけだ。

僕が命名したネズミのチャーリーを、嚙まれないように気を付けながら籠を開けて逃がしてやった。すると、少し進んでから一度、こちらを振り返った気がした。僕にはそう見えたのか、僕の都合のいいように記憶を改ざんしてしまっているのか、どちらであっても、誰の迷惑にもならないだろう。せいぜいこの話をした相手に、僕が嘘つき呼ばわりされるくらいだろう。

夜、寝静まるとコツコツと小さな足音が聞こえる、気がする。これも僕の妄想なのかもしれないが、僕は勝手に、ネズミのチャーリーが屋根裏で子ネズミのチャーリージュニアと遊んでいる様子をイメージすると、なんだか少しだけいいことをした気になり、その日はよく眠れるのだった。

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